――3月24日のペルー戦について抱負を聞かせて下さい
オシム どんな試合になるのかということなので、一言でいえば、エレガントな試合になればいいと思っている。しかし、それは今ここではまだお約束できない。しかし、ここで今初めてキリンさんがこれほど長い間日本代表を支援して下さっていると知って、今後未来にわたっても何も心配することはないなという感想を抱いた。例えば結婚生活にたとえると、30年ほどうまくいった夫婦というものは、まあ長すぎるかもしれないが(笑)、今後大きな破たんはなさそうだ。予想はできないが、あまり心配する必要はないのではないか。今後も皆さんとの協力関係はよろしくお願いしたいと思っている。これまでのご支援の感謝の気持ちとして、創業100周年にキリンさんにおめでとうと申し上げたい。
――エレガントな試合になればいい、ということでしたが、具体的にどういったところを多くの方に見せたいと考えていますか
オシム ユニホームがエレガントになる(笑)。試合の内容がエレガントになるとはお約束できない。エレガントにしようと思っていても、試合がいったん始まってしまうと、必ずしもそうなるとは限らない。試合が終わってみて、エレガントだったのはユニホームだけだったとならないようにしたい。
欧州組を呼ぶ前に、国内組を鍛えなければならない
鋭い眼光を記者に向けるオシム監督【 スポーツナビ 】
――ペルー戦ではヨーロッパのクラブでプレーしている選手たちを呼ぶつもりはありますか
オシム どの選手を呼ぶかは聞かない約束だったのでは?(笑) その前にあさってからの合宿がある。それが終わってから考えることになる。ヨーロッパでプレーしている選手たちについては、これまでにも何度か言っているように、いつでも彼らを戦力として計算している。ジョーカーをゲームの最初の方に出してしまうのはよい手ではない。切り札というのは適切な時に使えるようにとっておくのが一番いい。早過ぎる時期には使わない。まず切り札を切る前に、彼らを使わなくてもいいように、日本国内でプレーする選手を鍛えなければならない。その上で(ヨーロッパ組を)使うかどうかを考える。ヨーロッパでプレーする選手を呼んでより良いチームができるのかどうか、呼ぶとすればどのように呼ぶのか。私の個人的な考えだが、一番良いのは、日本のチームを作るということは、「ヨーロッパからあの選手を呼ぶのですか、呼ばないのですか」と皆さんから聞かれる必要のないチームをなるべく早く作ることだ。
――本来強い相手と戦うことを望んでいたということでしたが、対戦相手がペルーということについては満足していますか
オシム 一番良いのは例えばブラジルであるとかドイツであるとか、世界最強のチームと試合をするのが良いのだろうが、そう簡単に組めるわけではない。それから、今の質問はペルーを過小評価しているように聞こえたが、そうなのか? ペルーがどんなチームか調べた上での質問ならば、ちゃんとお答えしよう。ペルーが簡単な相手なのかどうか。ペルーだけではなく簡単に勝てる相手はこの世界にはなかなかいない。つまり、今はどんな国の代表チームであろうと、必ずこのチームには100パーセント勝ちますと言えるような相手はどこにもいない。だから、勝ってほしいという皆さんの気持ちは分かるが、それを100パーセントやれるという約束はできない。代表チームだから、どんなチームだろうが、必ず勝てる相手というのはない。そこがサッカーの面白いところでもある。どんな結果になるかは予想できない。それが魅力でもある。
(ペルー戦は)楽な試合にはならないということだけはハッキリしている。ペルーという国の名前だけでなく、選手名簿を見てほしい。代表選手がどこの国のどのクラブでプレーしているか。それを見ればペルーがどんなチームかということ以上に、リスペクトしなければいけないチームだと分かってもらえると思う。
日本の代表選手にとっては良い試合をするチャンス、そういう相手と考えていい。結果がどうなるかは分からないが。特にアジアカップの数カ月前に行われるタイミングなのだから、アジアカップでの戦い方の具体化をそろそろ始める時期。ペルーがベストメンバーで来ることを期待している。ペルーがどんなメンバーで来るかはここで私が言わないで、皆さんに調べる余地を残しておこう。
――8月と10月の強化試合でどんなチームと対戦したいか
オシム スポンサーとサッカー協会の担当者と相談して、知恵を絞ってなるべく魅力的な相手を連れてきてほしい。だが有名で人気のあるチームを呼んでくるのは難しい。だからどんな相手でも全力を尽くす。その相手と真剣勝負することによって、日本サッカーの実力がどこまできたか物差しになる。相手を選ぶ権利は川淵さんとスポンサーに決めていただくようにお願いしたい。個人的な考えでは、日本が絶対に勝てる相手を探してきてくれと言いたいが、さっき私が否定したばかりだから難しい注文だ。
――何度も聞かれているかもしれませんが、今年1年どういうチームにしていきたいか目標を聞かせてください
オシム スローガンの「ALL FOR 2010!」にふさわしいチームを作る。先ほど(広報が)説明した、それが答えだよ。最終目標はワールドカップ(W杯)、それにふさわしいチームを作る。その途中にいくつかの障害物、ポイントがある。アジアカップはある意味で日本の実力を測る指標になる。つまり、W杯のアジア予選の予行演習になると考えることができる。アジアカップの決勝トーナメントの上位に出てくるようなチームが、W杯の予選でもライバルになるだろう。今回は良い経験になるし、チャンスだ。目標のためにアジアカップも活用するということだ。
――先ほどヨーロッパ組はジョーカーで、適切な時期に出すということを言っていましたが、アジアカップは適切な時期と考えていますか
オシム それはこちらの事情だけではなく、向こう(ヨーロッパ)のスケジュールにも合わせなければならない。あまり長い話をしたくはないのだが、皆さんがヨーロッパから選手を呼びたがっているのは分かる。だけど、呼んだらどうなるかという“副作用”を考えてほしい。例えばヨーロッパでプレーしている、ある選手を呼んだとする。日曜に(クラブで)試合があって月曜日に出発したら、成田に着くのは火曜日になる。火曜日の夜に着いて、直行してトレーニングができるか。あるいは水曜の試合にぶっつけ本番で出るか。呼ぶならば出てもらう。いいプレーをしてもらいたいが、そういう状況がある。飛行機の中で寝られなかったり、時差の問題、疲れている、そういう状況でプレーしなければならない。呼んだからにはいいプレーしてほしいだろう。その結果どうなるか。試合はともかく、終わったらすぐにヨーロッパに戻らなければいけない。それで給料をもらってる自分のクラブに合流する。ヨーロッパはどんなに競争が厳しいか皆さんご存じのはずだ。監督には権限がある。誰を使うか、遠い日本まで行って疲れている選手を使うかどうか。大阪と東京の往復とは違う。ヨーロッパなのだ。(ヨーロッパと)日本を往復してきた選手が、正常なコンディションで次の試合に臨めると監督が考えるだろうか? レギュラーの選手なら、ひょっとしたらポジションを失うかもしれない。そこでレギュラーを失った選手はもう2度と(代表に)呼べないわけだ。どうしたらいいか、皆さんの知恵も借りたい。私の考えを理解してほしい。もしヨーロッパでプレーしている選手がスーパーマンだったら話が違うが。それならば呼んでも問題ない。(質問を打ち切るように日本語で)アリガトウ(笑)。