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2008年1月 4日 (金)

オシム・ジャパンを殺したもの

宇都宮徹壱氏のコラムを読んで、思うこと。
http://footballdog.at.webry.info/200712/article_1.html

2006年7月、オシムが日本代表監督に就任した時に「監督契約とは結婚のようなもの」とコメントをしたことがあった。その時、自分の脳裏にふと浮かんだのが「鬼婿入り」という昔話だ。

大筋は(いろんな類型・パターンがあるので、あくまで大筋)
「昔、ある所に日照りで田んぼが干からびてしまって非常に困っている百姓がいた。そこで百姓は『田んぼに水を満たしたら、自分の娘を嫁にやってもいい』とつぶやいた。それを聞いた鬼が、不思議な力を使いたちまちのうちに田んぼを水で満たしてしまう。そして鬼に『お前の娘を嫁にくれるんだろうな』と念を押す。百姓は困ったが、娘は鬼の所へ嫁へ行く。だが計略を使い娘は鬼を殺し、めでたしめでたし」という話だ。

もちろん川淵三郎キャプテンが百姓で、オシムが鬼だ。
ドイツW杯の惨敗後、川淵三郎は非常に困っていた。自分が独断で選んだ婿(ジーコ)はチームの空中分解を回避できず、日本代表は全く惨めな敗戦を喫する。さらにジーコのチーム作りは「あくまで結果を求めるもの」であり、その結果、2世代に渡り国際経験に穴を空けるものだった。そのチームが結果も残せず惨敗したのだ。敗戦の後は、何も残らずペンペン草しか生えないような状況だった。帰国したら間違いなく自分の立場が危うくなる。川淵は非常に困っていた。そこで川淵はオシムを次の婿に選んだ。だが、その婿は文字通り「サッカーの鬼」であった。日本代表の発展にとって「不要で有害なビジネス」を徹底的に排除する姿勢は、「まずビジネス(金儲け)ありき」と変質してしまった川淵にとっては、とうてい受け入れられないものだった。陰では「前の婿(ジーコ)は、あんなに言うことを聞いてくれたのに、頑固な爺さんだ」と思っていたに違いない。オシムは日本代表の発展のために不要なビジネスを拒否しただけだが、金の亡者は、性懲りもなく代表を金儲けの材料に使いたくてしょうがなかったのだ。だが、自分の弱くなってしまった立場を考え、我慢を重ねていたのだろう。

オシムという鬼は、ジーコにより干からびた田んぼに水を見たし、そして2010年を目指して、その田んぼを最適な形に改良し手を入れていった。現段階において、「日本サッカーを日本化する」という作業は世界を知り日本を知り、そして経験も知恵も、日本人の誰にも手の届かないところにあるオシムという鬼の力を借りることでしかなしえることはないだろう。だが、このオシムのプランも、苗を植え付けた所で、終わってしまった。
オシムが病魔に倒れたことは事実だ。だが、目前のW杯2次予選の相手と日本代表の力、それに2位抜けでも大丈夫というレギュレーションであれば、あの反町でもおそらく大丈夫だろう。オシムの回復を待つなり、オシムと同等クラスの力を持つ外国人を探すことは十分に可能だったのだ。そこまで急ぐ必要はなかった。
だが、急いだのは川淵三郎に「ビジネスに協力しないオシム」を続投させる気がなかったためだ。もしオシムの病気がなかったとしても、いずれオシム・ジャパンは川淵から「殺されていた」ように思う。まず朝日新聞あたりにリークし、スポーツ新聞などの子飼いの記者たちには、「鬼」と書かせ「反オシム」の雰囲気を作成した上でクビを斬っただろう。そう2000年のトルシエ解任騒動の時と同じように。オシムが、その「裏切り」に合わなかったことだけが「不幸中の幸い」だったのかもしれない。

後任に選んだのは早稲田の後輩であり古河の後輩でもある岡田武史だった。今度の婿は、「鬼」と違いコントロール可能だろう。もちろん岡田は日本人監督の中では最も優秀な監督の一人であることは間違いない。だが、最も難しい大会であるW杯を戦うには、経験が不足している。それはトップレベルの世界(ヨーロッパ)で監督をした経験だ。そこには行かなければ理解できない「ディテール」がいくつも存在する。それはほんの些細なことだが、それがW杯という舞台では勝敗に直結する。岡田武史は日本人の中では最も優秀な監督の一人であるが、そのディテールの多くは理解できてない。宇都宮氏の言うように岡田ジャパンは「おそらくアジア予選を勝ち抜くも、本大会でまたしても世界との距離を露呈」して南アフリカから戻ってくるだろう。そうフランスW杯と同じように。

オシムジャパンの消滅で、日本は世界に追いつくための時間を大幅に遅らせることになった。おそらく川淵三郎と電通が日本サッカー協会を牛耳っている以上、その差は縮むどころか、開いていくばかりだろう。今回のオシムの病魔は、サッカーの神が「このトップにオシムはもったいない」と思ってされたことなのかもしれないが...。

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