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2007年3月24日 (土)

ペルー戦後 オシム監督会見

印象として肉でも魚でもない。あまりよくない、という意味だ。(選手たちは)ナーバスというか、自分の力を試したいという気持ちがあまりにも強すぎたので、神経質になってしまったのかもしれない。そのために不必要なところでミスをして、ボールを奪われることが何度かあった。ペルーが欧州組を含めたフルメンバーをそろえていたら、もっと厳しい試合になっていただろう。だから、勝ったといって浮かれることはできない。それが現実だ。日本は勝ったし、内容も良かった。それは認める。ただし、勝利そのものは良いことだが、その中にはダーティーな面もあった。それから、ペルーがチャンスらしいチャンスを作れなかったという現実もあった。(そうした現実に)目を向ける方には見えるだろうし、そうでない方には見えないだろう、もうひとつ別の事柄がある。特に後半だ。後半やったようなプレーを90分間続けなければならない。それができるかどうかはまた別問題だが、日本のサッカーの目指す方向性が、今日の後半の一部の時間帯に行ったプレーに表れていた。中には、後半の残り時間が少なくなり、相手が白旗を揚げていた時間帯だから、そんなに意味はないとお書きになる方もいらっしゃるかもしれない。だが、そういう事情があったにせよ、ああいうスピーディーなタッチの少ないボール回しを、試合の最初から行わなければならないと思う。
――ペルーにチャンスらしいチャンスがなかったということだが、それはペルー側に問題があったのか、それとも日本の守備がしっかりしていたからか?
 両方だ。彼らのチーム力(の問題)もある。逆にこちらから聞きたいが、今日の試合は何らかのアンラッキーな要素によって負ける試合だっただろうか。勝利に値しない試合内容だっただろうか。そうやって議論し合うほうが、記事を書くのに役に立つと思う。だが今の質問からすると、どちらのチームを応援していたかと聞きたくなる。どちらのチームを応援していたか? という質問にだけでも、お答えいただけるだろうか。
――もちろん日本代表をいちファンの視点として見ていたが、ペルー側の視点も持つことはあまり問題にならないと思う
 私はこの結果には満足していない。そのことについてはご理解いただけただろうか。ペルーがもし欧州から選手を連れてきていたら、違う結果になっていた。日本がミスを犯す時間帯が多かったことを申し上げた。それは私が最初に申し上げた印象であり、つまり喜んではいないことを別の言葉で言ったまでだ。いい試合だったとは言ってはいない。通訳が間違っていたのかもしれないが。
――では後半のプレーが良かったというのは、具体的にどの部分だったのか
 2-0になって、若い3人のプレーヤーを投入してから、スピードが上がり、ワンタッチプレーが多くなり、エスプリの利いたプレーが随所に見られるようになった。相手がペルーであっても、こちらがこちらのプレーをできていた。それは皆さん、ご覧になっただろう。それがポジティブな面だ。もちろん、ああいうプレーをどんな相手に対しても90分間続けられることが、簡単だとは私も思ってはいない。だが、あれが理想だと申し上げている。あれが、これからの路線の方向である。だから個人で打開することに頼ってはいけない。集団的なプレーが大事なのだ。そこで意見が一致しなければ、日本のサッカーの方向性にまた違った問題が出てくるだろう。もちろん日本は議会制民主主義の国だから、いろんな意見があっても構わないが。
――前半、ペルーが元気だったとき、なかなか日本が前線にボールを出せない時間帯が続いたのはなぜだと思うか
 質問の中に答えが隠されている。つまりペルーの個々の選手は悪くなかった。観光に来たのではない、モチベーションがあったということ。彼らも、時間は限られていたにせよ、出来る限りのことをチャレンジしていた。彼らがイニシアチブを取れなくなってから、サッカーは違う展開になった。つまらない試合をするのは簡単だ。良い内容を作り上げることは難しい。私たちの側では、長い間一緒にプレーをしていない選手を加えた。すなわち、異質な選手を組み合わせたチームで、建設的なサッカーをしようとトライしたわけだ。初めて顔を合わせた選手もいれば、一部の選手は何度もボールを触りたがった。自由を認めつつも、その選手は非常に疲れていて、コンディションがよくなかった。疲れている場合、アイデアが出てこないし、ミスも繰り返す。もし別の強い相手に、前半のような戦い方で挑んだのであれば、逆に前半だけで0-2という結果になっていただろう。そうした弱点を、これから私たちは直していこうと思う。
――中村俊輔が特定のマークを持たず、相手の5バックの一番右の選手がフリーになっていて、後半そこから攻められるような場面が見られたが
 中村俊輔が弱点を持っていたということか。そういうふうに答えればいいのか? 中村俊輔が、どういうプレーができて、どういうプレーができないか、知っていての質問なのか? 彼はマラソン選手ではない。だが、以前よりは長い距離を走れるようになった。それからアイデアのある選手であることは、皆さんよくご存じだろう。そして人間だから、当然疲れる。疲れたらアイデアが出なくなる。彼の改善点を教えるとすれば、プレーのスピードを上げることは、彼の力ならできるはずだ。それは自分でも知っていること。しかし今日の試合は、彼にとって難しい試合だった。彼自身も何か特別のことをやろうという気負いのようなものがあった。プレッシャーが自分の中にあった。つまり、1本1本のパスすべてが、ナイスパスとなることを狙っていたのかもしれない。だが、世界中探してもそんな選手はいない。彼がやるべきは単純なプレーであり、天才ぶりを発揮する場面というのは何回かに1回だ。いつも天才であろうとすると、結果は無残なものになる。ただし、今日の中にもいいプレーはあっただろう。
――高原についてはどういう評価か
 試合の始まった直後はかなり苦労していた。つまり、チームに合流して間もないということでフィット感がなかった。だが、時間の経過とともにプレーはよくなった。彼も1人だけでプレーするわけではない。周囲との関係が大事になるわけだが、そこで自信がなかった。あるいはアイデアのないプレーしかできなかった。そういう状態だと、FWというポジションは難しい。しかし時間が経過するごとに非常に良くなった。高原という選手がなぜドイツ・ブンデスリーガでプレーできているか――それが偶然ではないことが分かった。
――試合の中ではタメを作ったり、テンポを遅らせることも必要だと思うが、そうしたバランスについてはどう考えているのか
 ここはサッカー学校ではない。あなたに個人的に教えてもいいのだが、サッカーで何が難しいかというと、いつキープし、いつパスを出し、どういう強さでどういう方向に、という判断だ。私はいつでもワンタッチを、と言っているのではない。だが、自分こそがチームの攻撃の起点であると思い込んだ選手、ボールをトラップして周りを見渡し、どこにボールを出そうかと、そういうプレーをする選手が1人いれば、相手チームにとっては、その選手1人をマークすればよいことになる。逆に、そういう余裕を与えないこと、それがワンタッチプレーの良さだ。高い技術を持ち、ワンタッチでくるのかウエイトするのか、予想のつかないプレーができるのが良い選手だ。それはサッカーの技術ではない、インテリジェンスだ。一般的なインテリとは、ちょっと性質の違うものだ。サッカーのインテリジェンス、一般社会のインテリジェンス、両方ある方が本当は良いのだが。中村俊輔も、時間の経過とともに分かってきたのだと思う。1つ1つのプレーのタッチ数が少なくなってきた。つまり自分で難しいことをするよりも、簡単なプレーをした方が効果的であると、彼自身が気が付いたのだろう。まあ、違う意見もあるだろうが。
――自分たちの力を示したい選手がいたとおっしゃっていたが、そういうことを気をつけるように試合前に伝えなかったのか
 試合前に何かを一言二言伝えたら、選手は変わるというのだろうか。久しぶりに日本に帰ってきた選手に、何か言えば気が楽になるとお考えだろうか。一般的には(海外組は)凱旋帰国して、非常にいいプレーをして、というようなことを考えるのではないか。それが普通の人間だろう。久しぶりに出場して2ゴール、3ゴール決める、あるいはフリーキックを決める。だがサッカーは、相手のあるスポーツだ。1人、2人でできる競技ではない。だから皆さんは、中村俊輔にプレッシャーを掛け過ぎたのだ。彼以外にも選手はいるのだから。
――中村俊輔のことを言ったのではない。焦りからミスをしないように精神的なケアを試合前にしないで、試合後に「負けていたかもしれない」と言うのはどうかと思ったのだが
 試合前のミーティングで何を話したかといえば、何も話さなかった。私が言ったのは、「自分がペルーのユニホームを着たつもりで考えろ。君たちがペルー代表だったら、今日の試合はどんな気持ちで臨んだのか。ハンディキャップがある。つまり4~5人のベストプレーヤーがいない。何を考えているのか、何をしたいのか、想像してプレーしなさい。日本に対して、どんな気持ちで向かってくるのか考えろ」。(ミーティングで話したのは)それだけだ。実際にペルー人になることはできないが、想像はできるだろう。その結果、選手が何を考えるか、あるいは私がそう話すことで選手に何を期待しているか。うまくいったかどうかは皆さんのご判断に任せる。逆に考えるなら、日本が欧州に行って、そこで試合をする。そうなったときに、試合前から「降伏します」と考えるような、そういう試合をするだろうか。少しは意地というものがあるだろう。だから、「今の君たちの考えを一時ストップして、相手の考え方を想像しろ」と。そういう話をもっと短い時間でした。だから私の目から見れば、ある選手は想像できて、別の選手は失敗していた。
――エスプリを見せた3人の選手たちは、今後出場時間は増えていくのか?
 若い選手というのは、よくない。若い選手がいないのは、もっとよくない。昨日の英字新聞で読んだのだが、ライターが何を言いたいのかよく分からなかった。そこには「若い選手を使うべきだ」というのと「ベテランの選手を使うべきだ」という意見が両方書かれてあった。「巻を使うべきだ」「巻を使うべきでない」が、同じ文章の中にあった。ひょっとしたら、何の問題もないところに火種を作るような、つまり意図的にわれわれの悪口を書く人なのかと思った。そこで今質問した人に逆質問するが、今日出場したU-22代表の選手たちが中村俊輔や高原の代わりに先発で出場していたら、そして試合に負けていたら、皆さんはどんな記事を書くだろうか。私は進むべきノーマルな道を進もうと思う。それもなるべく痛みを伴わないで、しかも中身が変わっていく。誰にも気づかれないように、大掛かりなことのないように、少しずつ若返っていく。簡単なことではないが、世界中の代表チームがその方向に進んでいる。しかし日本には、若い才能豊かな選手が少なくないことは申し上げておこう。U-22の選手には、君たちの応援団が記者の中にいるぞと伝えておこう。悪く考えないでほしい。私は何もボトルのキャップやラベルが真っ黒だと申し上げたいのではない。あるいはこれがビールであると申し上げているのでもない。今日の試合の感想は、私が考えていることと全く正反対のことを言っているわけではない。勝ったからといって、良かった良かったとは申し上げられない。次の試合がもっと良くなる余地を残しておきたい。今日の試合が良かったと言ってしまうと、それで進歩は止まってしまう。

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