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2007年2月12日 (月)

フットボールカンファレンス#2(非常におおまかな抜粋)2007年1/6大阪

田嶋幸三
ポジティブな面
2005年コンフェデ、ギリシャ戦、ブラジル戦、ドイツ戦
・スキルを生かした攻撃、スキルを生かした中盤の組み立てができた。特に中田英、中村。将来世界トップ10に入るためには、日本人の特徴であるスキルを生かしてつないでいくということが必要だ。

・前を向いての1対1、1対1の場面で、良い形でボールを持てば、ブラジル、ギリシャといたトップレベルのディフェンスもかわすことができる。加地、柳沢、玉田
しかし、本当に中盤でプレシャーをかけられた時に、それを実現することができるか?

・動きの質と量、攻守の切り替えの際、チャンスと判断した時に、数名ではなく5人、6人とからんで攻撃するという世界レベルの意識が近づいてきた

課題:
・フィニッシュの精度、ストライカー不在は10年以上言われていることです。どう取り組むか、FWだけの合宿やGKと合同の合宿をやっている。これらを継続してやっていきたい。完全に崩したにも関わらず、得点につなげることができなかった。

・長身のディフェンダーがいない。田中誠、宮本、茶野、他の選手、GKも含め170cm台がほとんど。こういうフィードバックはジーコにも伝えた。コンフェデの後、川崎Fのミノワ(188cm)という選手を選んだが、ジーコの順列には最後入らなかった。そこでどういう対策をしたかというと、まずクロスをきちっと上げさせない。DFはきちっと視野を確保して、いいポジションで自由に相手にやらせないという視点でやってきた。身長の高い選手は動きが遅く見えたりするが足下の技術がないように見えるが、そういう選手もきちっと育成していくことも考えていきたい。

・球際の強さ、球際での1対1の競り合いで負けることが多い。球際の厳しい1対1を実行しない。他の国と比較し、通用してるのは中田英のみ(あとは今野ぐらいか)。これを解決するには審判とのからみで解決していくしかないんじゃないかと思っている。
Wユースで中村北斗がオランダのクインシーにやられたシーン、ショルダーチャージで行ってる。このショルダーチャージはトレセンとかでも指導してきた。しかし中田英などは腰とかで行ってる。コンタクトの方法が違う。日本サッカー全体で変えていかなければいけない問題もあるんじゃないかと思っています。

・コミュニケーション、コミュニケーションができないためにヨーロッパから帰ってくる選手もいます。英語ができないとかそういう問題ではなく。試合中に自分の意見を言うことができなかったりとか。お互いの意見をフランクに言い合うことができない。試合中に自分の意志を伝えることが下手。他の国と比較して差の見られる部分。ルメールが2000年のユーロ決勝で、イタリアの左サイドが手薄になっていた時に「監督がそこを攻めるように指示したのか?」と質問したら「あれは選手達が自分達でやったんだ」と誇らしげに言った。フランスは、そういう意味でレベルの違うサッカーをしていたんだなと思う。そういうところまで日本も持っていかないといけない。
・ジーコ監督に関して「早すぎたのではないか?」という意見がある。「もっと成熟して自分で判断できる選手が多くなった時に、ジーコだったらもっと良かった」んじゃないかという方がいたんですが、そういう意味では「やれるものは早くやった方がいい」ですし、それに対応できなかったのが分かったことも、それは事実です。自由と自分で判断するバランスというものを、僕らが指導していくべきじゃないかと思いました。

・コンディション、ドイツ戦がピークになってしまった。フィジコ里内コーチがすごく反省している。ジーコのやりたいサッカーをこのドイツ戦で見せてくれました。得点場面も含めて。しかし、あの1戦で、空気が、日本国内はもちろん、地元メディアも含めて「日本が優勝候補ではないか」という風に変わった。それが選手たちにも伝染した。技術委員会では、グループの中では3番目か4番目の実力だろうと思っていました。根拠はヨーロッパでプレーしている選手が何人いて何人レギュラーなのかということです。オーストラリアは150人近くがヨーロッパでプレーしています。クロアチアやブラジルに対しては説明する必要もないでしょう。我々も10名近くがプレーしていますが、残念ながら中田英もレギュラーではなかった。レギュラーが非常に少なかった。本来であれば一番の挑戦者として向かわなければいけなかった。しかしドイツ戦の善戦で「優勝候補」のような空気になり、そのまま本戦に突入してしまった。そこは反省しないといけない。イタリアやフランスもグループリーグではあまり良くないが結果を残している。そういう点も足りないだろう。ジーコは「W杯前に2試合したい」1つは強くてうちが負けてもいい相手にしてくれ。そこでドイツです。2試合目にマルタ。ジーコが高校生とやっているように、自分達が点を取って盛り上がっていけるような相手。しかし、ドイツ戦の善戦で狂ってしまった。

・アジアと日本の差
悪いコンディションで雑な試合をしても、アジアでは勝てる(相手が崩れる)。W杯ではそれができない(相手が最後まで崩れない)。今回、ヨーロッパから選手を招集しながら予選を戦ったのは初めてです。必ずしも、いいコンディションではありませんでした。しかし、そういう中でもアジアでは結果を出せたが、W杯では、それほど甘くはなかった。

・オジェックに言われたのですが、現在のストロングポイントを、もっと伸ばさなけくてはいけない。いつもネガティブなポイントを修正するばかりではなく。短い時間かもしれないけど、世界に通用する部分が出てきました。そういう部分を伸ばして、その上で、日本の良さ、特長を生かした闘い方を追求していく。

・日本スタイルの確立
世界のサッカーの分析→足りないものを強化
日本の長所を活かす。強いメンタリティ、切り換えの速さ(攻守でのポジショニング)、コレクティブ、ディシプリン。数的優位での攻守。ボールと人が動く。

代表チームの強化
・その時にメンバーを集めて闘うだけではない。そんな簡単なものではない。それだけでは世界トップ10のレベルに到達できない。
★★さまざまな改革を重ねて~総合的なアプローチで地力を上げる
・47FA法人化、キッズプロジェクト、国体少年の部U-16化、指導者登録、トレセン改革、再教育の充実、エリートプログラム、JFAアカデミー福島、等々

技術委員長になってからの4年間、いろいろありました。アジアカップの優勝などもありました。A代表だけでなく、五輪代表なども見てきました。いろいろ努力はしてきました。結果が悪ければ、いろいろ言われるのは事実でしょう。これからもいい時や悪い時があると思います。しかし、これからも夢に向かって一緒に行きましょう。

布啓一郎(JFA-TSGの分析)
サッカーは生き物で、どの国も課題を見つけ前進した中で、2002W杯よりも進化した大会でした。2006W杯はヨーロッパで行われた大会で、さらにCLからもより長く休息を取った中で行われた大会でした。
ベスト8の内6カ国が優勝経験国。さらに選手層の厚さもあった。各国が2002W杯の教訓を生かしたチーム作りをしてきた。
2002年は日本にとって気候的な状況も含めてホームだった。伝統国・強豪国が敗退していった。しかし2006年は、その教訓を生かしてヨーロッパがホームという状況で、大きなサプライズはなかった。

・またキーワードとして「甘えの許されないサッカー」ということがあげられる。高度な技術、闘う姿勢、ハードワークの3つを高いレベルでベースとして持っている。何かを免除されるスーパースターはもはや存在しない→スーパースター観の変化。

・アジアの敗退、今大会のような条件では実力がそのまま結果にむすびついた。アジア内の闘いで通用しても、世界では通用しなかった。

攻撃の面で
1:ダイレクトプレー、攻守の切り替えの早いサッカー。守備の整備によってカウンターからの得点は減少。相手の背後を突く意識は優先順位の一番→サッカーの成熟。カウンターを受けない守備の改善。相手が守備を構築した中でも、一番ゴールに近いプレーを行う。ミドルシュートが注目された。またオフサイドルールも変更されたので、ラインを高くして守るチームはそれほど多くなかった。しかし、ラインをただ下げてるだけのチームは敗退した。20m以上の距離から当然のようにゴールを狙えることが行われていた。

2:ボールを保持しながら積極的にゲームを支配。幅と厚み。シンプルな技術の質(ファーストタッチ、パススピード)→日本は特別なことで負けたのではなくシンプルな技術が不足していた。
相手に支配されると精神的・体力的に消耗して90分間持たない。ゲームを支配する。ボールを失わない。攻撃はDFを開かせるために、サイドを有効に使っていく。また厚みも使っていく。CFが深い位置を取る。またGKも含めてボールを失わない。
サッカーは派手なプレーは少なくて、シンプルに止めてパスするということが繰り返されている。
動きの中で行われている。動きの中で状況を見て、一番いいところにファーストタッチを持っていく。一番いいところに精度の高いパスを出していく。そういうことがボールをポゼッションするためには非常に大切だ。

*得点に至る攻撃に要した時間(ボールを奪ってからの)
2002年はボールを奪ってから10秒以内での得点が53%あった。2006年では3割に変化した。まずカウンターを狙っていくんだけども、守備が良くなっていて、カウンターを受けないようになっている。でも、簡単にボールを失ってしまうと自分達が消耗してしまう。カウンターがうまく行かない時には確実にボールをポゼッションしていくということが行われた。
今大会はDF(GKも)の技術の高さが目立った。安易にクリアしないで攻撃につなげる。ボールを失わないためにも、DFであっても、スキルの高さは必要不可欠であると言える。

ボールを失わなずに相手ゴール前まで運ぶためにはスキルの高さが必要不可欠である。今大会を勝ち上がったチームは当たり前(止める、蹴るプレー)のプレーを非常に高いレベルで行っていた。

ボールを失わないためには、相手のプレッシャーを回避できるだけのパススピードが重要である。早いパススピードによりボールを受ける選手のプレーエリアが確保される。

*得点に至る攻撃時のパスの本数
ボールを奪ってからパス3本以内に得点に至ったのは2002年は55%だった。(短い時間で得点を奪っていた)、2006年は40%になっている。

*モビリティー(活動量、運動量、動きの質)
・守備を固める→守備の薄い所を攻める→スペースを自ら作り出し使うための質の高いモビリティー(ボールをコントロールする質は高いが、動きの量と質の欠如したブラジルの敗退)
組織化されたディフェンスを崩すためにボールを持たない人の動きが重要。そのためには、ボールよりも前に多くの人がいる必要がある。ボールより前に出て行くだけの運動量も必要。
(準決勝ドイツ対イタリア戦でのデル・ピエロのゴール、自陣ゴール前から一気にドイツゴール前まで上がっていって見事なループシュートを決める)

*ゴール前の質
・ラインを高くして守るチームが少なかった(GKとの1対1の場面の減少)
・クロスの有効性
・個の能力(シュートの能力や精度、ラストパスの精度)
やはり一番重要なのはゴール前の質である。勝負を決定づけるゴールを奪えるかどうかは、シュートのうまさなど、ゴール前の狭いエリアの中でも安定した技術を発揮できるかによる。このエリアの中で決定的な仕事を出来る選手がいないと勝ち上がることは難しい。
今大会、得点の多かったミドルシュートも、両足で打てるとその幅は広がる。
・ゴール前のコンビネーション

*守備
1:ボールを奪いに行く。
・前線から意図的にボールに制限を加える。(ゲームを支配されると体力的にも精神的にも消耗)
・奪われたら奪い返す(個人の責任)→攻撃へ。また奪い返しに行く→相手のカウンターを阻止する。
・チームで連動する(組織の役割)
今大会はボールを奪いに行く意識が非常に強かった。その結果、プレッシャーが非常に厳しく、「甘え」が許されないサッカーが展開されていた。また、このような守備はポジションに関わらず行われており、それはスーパースターといわれる選手であっても同様であった。ハードワークしないと全体でプレッシャーをかけることはできません。

2:緻密な守備を支える個人の守備能力
・ボールに寄せ身体を当てていく
・(ボールを奪う)チャンスを逃さない判断と決断力
・守備範囲の広さ(全員がハードワーク)
相手がいい状態だったらむやみに飛び込むなと言いがちだ。しかし、今回のW杯では、身体を寄せて当てに行くような守備が多く見られた。
しかし、奪いに行くという意識が高いだけでは、ボールは奪えない。意識だけでなく、守備スキルが高いため、チャンスを逃さず奪うことが出来るのである。スライディングで奪う力。(どうしても日本の選手は土のグランドが多いので、うまくなってはいるけど、まだまだ向上させていかないといけない)
奪うチャンスを逃さない→奪いきる。1対1の対応→奪いきる。
またスキルのみならず、一人一人の守備範囲の広さも、守備組織を支える要因の一つであった。
・判断をした中で奪いに行く。こういった守備は非常に緻密な判断の中で行われていた→無謀な守備ではない。セオリー通りのポジショニングではなく、パスを出す前から周囲の状況を見て、インターセプトできるようなポジションに変えている。時には状況を判断して自分のマークを外してもボールを奪いに行っている。

3:個人の守備力を基にチームでの緻密な守備
・制限を加えることで、確信を持ってチャレンジ(状況下でやるべきことを当たり前に行う)

★★★日本の課題
*日本の成果、いいところはあったが、それをできた時間は非常に少なかった
・守備(連動した守備)、ブロックを形成しながら状況に応じてボールを奪いに行く。
・攻撃(パスワーク)、テンポ良くパスを回してる時間もありました。

*日本の課題、攻撃
・自陣に多くの人数をかけてしまう傾向がまだある。ボール保持者が、前方にスペースがあるにも関わらず止まった状態でパスを出すことによって、パスを受けた者へのプレッシャーが強くなる→後方へボールを下げる→プレッシャーがさらにかかる。なかなかボールを前へ運べない。さらに奪われたらピンチになる。(周囲の動き出しが少なくパスの選択肢が少ないという要因もある)
対戦したブラジルなどは、選手達が周囲の状況をよく見ている。さらにパス&ムーブが良くできていた。
スキル:動きながらのスキル、プレッシャーを受けながらのスキルに、まだまだ問題がある。

攻撃の運動量、パスを出しても動きが少ない。ボール保持者の周囲が動いて相手ディフェンスを変化させないと有効な攻撃にならない。また前に出て行くことが少ない。ボランチやCBが積極的に前に出て行くことで決定的な場面を作るということが少なかった。

守備-守備の意識・対応-
・ボールを奪いに行く意識の低さ。相手に対するプレッシャーが弱い場面が多かった。
コンタクトスキル、1対1での対応。これがまずい場面も多かった。
日頃やっていない事を代表でやれといっても無理なので「国内ゲームでもハイプレッシャーな環境に」。日頃の環境を、どう変えていくのか、それもこれからの課題だろう。

まとめ
現代サッカーの方向性は日本に不利な方向には行っていない。
日本の良さを生かせる現代サッカーの方向性
日本人のストロングポイント:勤勉性、理解力、協調性、集中力、持続力
チーム全体がハードワークする「甘えの許されないサッカー」
高度な組織化→90分間をタフに闘う。攻守においてチーム全員がハードワークすることは日本人には可能。
現代サッカーは個の能力を組織で補うものではない(世界のトップレベルと比較すると、個人の技術・戦術不足を組織で補っている現状がある)
世界基準からの逆算→個の育成の必要性
個人個人の個の技術・戦術能力を高めていくこと。

日本人の技術
・ストロングポイント(多彩なフェイント、浮き球のコントロール、短い時間に多くボールをタッチできる)
・ウィークポイント(「動きながら」「プレッシャーの中」での基本、状況に応じたファーストタッチ、ポストプレー。ハイプレッシャーの中での判断能力。

ゲームを積極的に支配する
個人のスキルアップ
・look around(観る)-判断
・meet the ball(ボールに寄る)
・pass and move(パスしたら動く)、この3つの動きの習慣化
・技術・判断・動き-ボールを奪うための技術、ボールを失わないための技術-サッカーの基本
クラマーの時代から言われていること。これは全員ができているだろうか?
基本が出来ているだろうか?

日本人のウィークポイント-自立-、コーチが教えすぎていないだろうか?
・自分で判断して決断する
・自己主張するが自己責任も負う
・リスクを恐れずに挑戦する
・自由と秩序の理解ができる
・理不尽に耐えるメンタリティー

年齢に応じた長期育成と日頃のゲーム環境。

最後に、この2006年W杯が日本サッカーのターニングポイントで「あそこから変わったね」と10年後などに言えるように、次のW杯では日本がいい形で実力を出して「ここまで行ったね」と言えるようになれば素晴らしいかなと思っています。

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